ブログタイトル変更しました

 本ブログは元々「ikegai.jp@hatena」というタイトルで運営していましたが、2011年10月に拙著『情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究』が出版されたことを受けて、そのアップデートを中心に、EU・米国を中心とした世界各国の情報政策について書いていくことに致しました。

情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究

情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究

 「共同規制(co-regulation、コレギュレーション)」という言葉は日本ではまだあまり知られていませんが、主にEUの情報政策分野を中心に世界各国に広がりつつある、企業や業界団体の行う「自主規制(self-regulation)」に対して、政府が枠組設定や監視・罰則権限の保持等を行うことによって、柔軟な自主規制のメリットを活かしつつも、適切な政府関与をすることで確実に目的を達成していこうという政策手法です。
 『情報社会と共同規制』では2011年7月の脱稿まで、できる限り最新の内容を含めるよう心がけましたが、やはり情報政策はおそろしく動きが激しい分野で、ここ数ヶ月の間にも本書で取り扱ったテーマに関わる重要な立法や判例が出始めています。あまり頻繁な更新はできないと思いますが、EU・米国・日本の著作権・プライバシー・表現の自由に関わる最新の状況をちくちくとお伝えしてければと思いますので、よろしくお付き合いくださいませ。

拙著『情報社会と共同規制―インターネット政策の国際比較制度研究―』

 今月、初の単著が刊行されました。
 企業や業界団体による私的秩序形成としての自主規制(self-regulation)と、それに対する政府の補強措置によって構成される公私の「共同規制(co-regulation)」という概念を軸に、プライバシーや著作権の保護、表現の自由等、最先端の情報政策についてのEU・米国を中心とした幅広いケーススタディと比較検討、政策提言を行っております。
 
■生貝直人『情報社会と共同規制―インターネット政策の国際比較制度研究―』勁草書房
http://www.keisoshobo.co.jp/book/b93990.html

 
私人による自主規制でもなく、政府による直接規制でもない。公私で問題解決に向かう新しい政策手法「共同規制」が情報社会を拓く。
 
■内容説明
拡大する情報社会のガバナンスに、公私の「共同規制」ははたして有効か。通信・放送融合時代のコンテンツ規制、モバイルやSNS上での青少年保護、ライフログ技術のプライバシー保護、動画共有サイト音楽配信サービスの著作権問題といった現代的課題を中心に、EU、米国、日本の法政策比較を通して、情報政策の将来像を議論する。
 
■目次
序章 情報社会における公と私
第I部 政府規制,自主規制,共同規制
 第1章 自主規制から共同規制へ
 第2章 共同規制のフレームワーク
第II部 「団体を介した」共同規制
 第3章 通信・放送の融合とコンテンツ規制
 第4章 モバイルコンテンツの青少年有害情報対策
 第5章 行動ターゲティング広告のプライバシー保護
第III部 「団体を介さない」共同規制
 第6章 UGCP2Pにおける著作権侵害への対応
 第7章 SNS上での青少年保護とプライバシー問題
 第8章 音楽配信プラットフォームとDRM
第IV部 制度設計
 第9章 共同規制方法論の確立に向けて


情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究

情報社会と共同規制: インターネット政策の国際比較制度研究

シンポジウム「コモンズ・表現規制・ウィキリークス 〜情報ガバナンスの未来像」

 
 1/26(水)、東大本郷にて以下のシンポジウム(公開講義)に登壇します。最先端の問題をかなり包括的に取り扱う感じになりそうですので、ご関心の方々ぜひご来場くださいませ。
 
 

                                                                                                          • -

東京大学大学院 文化資源学研究専攻公開講義
シンポジウム「コモンズ・表現規制ウィキリークス 〜情報ガバナンスの未来像」
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/CR/forum/forumSP2.html
 
日時:2011年1月26日(水)18時〜20時30分(開場17:30)
場所:東京大学本郷キャンパス 情報学環・福武ホール 福武ラーニングシアター
 
登壇者:長尾真(国立国会図書館館長)
     藤本由香里明治大学国際日本学部准教授)
     金正勲(慶応大学大学院政策・メディア研究科准教授)
     生貝直人(クリエイティブ・コモンズ・ジャパン理事、東京大学大学院学際情報学府博士課程)
モデレーター:福井健策(弁護士、日本大学藝術学部客員教授
 
主催:東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究室
*入場無料・申込先着150名:digitalarchive2011アットマークgmail.com(アットマークを半角英数@に変換)
 件名をあなたの氏名にして、本文に氏名、ふりが な、所属を記入して上記アドレスにメールをお送りください。
 
【開催趣旨】
ディジタル化・ネット化で情報流通の可能性が無限に広がる中で、著作権表現規制などの「法制度」との摩擦は増えつづけている。
情報をめぐるルールはどうあるべきで、そのルールはどこで決められるべきなのか?
最近の事件や話題を題材に、第一線の論客を招いて「近未来の情報流通のルールとルールメイキング」のあり方を考える。
 
◆トピック
(1)ファイル交換・AppStore海賊版YouTubeなど作品の非正規流通
(2)アーカイブと権利情報データベースの夢
(3)クリエイティブ・コモンズその他のパブリックライセンス
(4)都条例問題の問いかけたもの
(5)Wikileaksなどの情報流出・告発サイト

                                                                                                          • -

学際学徒の心得

 学部時代も含めて学際学徒10年近くもやってると色々心得みたいなものも見えてくるな、ということで私家版「学際学徒の心得」をtwitterhttp://twitter.com/ikegai)でつぶやいていたのをちょっと転載します。まだまだ勉強していく中で間違いも分かってくると思いますので、たまにアップデートしていけましたら。
 
●学際学徒の心得その1、とにかく数を書くべし。学際分野では「彼は論文少ないけれど実力あるよね」とは誰も認めてくれない。一見関係なさそうな色々な物を結び付けたり新しい現象を論じるためには研ぎ澄まされた分析力と文章力が命。そしてその能力はとにかく数を書く中でしか身に付かない。
 
●学際学徒の心得その2、とにかく色々な人に読んでもらうべし。既存のディシプリンと違ってどんな論文が素晴らしいかの尺度は一義的には存在しない。書きたいこと・書くべきことは片端から書いてできるだけ多くの人に読んでもらう中で初めて価値は見出される。当然文章は極力ネットに載せる必要がある。
 
●学際学徒の心得その3、実践は何だかんだ業績にはならないと心得るべし。認めてくれるところもあるけれど少数派、学界で認められて学者になる以上やはり文章が命。実践で手足口を動かしてる間でも、「この実践をやった人間にしか書けない文章は何か」を見出すことに常に頭を回し続けているべき。
 
●学際学徒の心得その4、殊更博士課程以上になったら日本語の文章は読んでる時間は無いと心得るべし。英語圏ではとんでもない量と質の人たちが本気で学際を学問として何十年もやっている。あらゆる言語・分野から自分の研究に関係する最も優れた文章を探してきて、徹底的にその内容を盗み取るべき。
 
●学際学徒の心得その5、査読に出すべし。学際の場合特に既存分野の先生方に査読で認めてもらうのは難しいけれど、一流の研究者から指導を頂くまたとない機会になる。関係学会が無数ある中でどの雑誌にどんな書き方で出すとどの位の確率で通るかの方法論を体得する必要がある。
 
●学際学徒の心得その6、実業と学問の境目を体得するべし。学際の世界では両者は常にある程度曖昧、その境目は誰にも説明できない。とにかく経験する中でその境界を体得して初めて学問ができるようになるし、それがわからなきゃ「実業と学問の架け橋」だってできるはずがない。
 
●学際学徒の心得その7、競争するべし。学際は常にイノベーション、それは競争の中からしか生まれてこない。学際分野はともすれば「この分野は自分だけ」という場合もあるけれど、そこには競争圧力がない。擬似的にでも競争集団を作り出してその中に身を置く必要がある。
 
●学際学徒の心得その8、研究者にこだわるべし。学際には多才な人たちが多いから他業種に移ることが比較的容易だしそれは望ましいんだけれど、その退出可能性が研究者としての甘えになっていないか。自分が考える研究者像とは一体何で、それにこだわる理由とは一体何なのかを殊更明確に持つ必要がある。

DCAJセミナー「コンテンツビジネスとその法的環境の10年

 
 以下の通り、9月16日(木)のセミナーで講演します。既に残席僅少みたいですのでお申し込み頂けるようでしたらお急ぎくださいませ。「これからのデジタルコンテンツ法制にとって著作権はあまり重要でない」という方向で空気読まずに喋ります。
http://www.dcaj.org/contents/frame04.html
 
===
 
DCAJセミナー「コンテンツビジネスとその法的環境の10年」
 
− コンテンツビジネスの10年
− コンテンツビジネスをめぐる法的環境の10年
− 今日的課題と課題解決の方向性
 
 地上デジタル放送、IPマルチキャストSNS、UGM、デジタル携帯端末、高性能ゲーム機、スマートフォン、3Dテレビ、3D映画館など、今では身近となったコンテンツ提供サービスや視聴機器も、この10年間に消費者の利用に供されたものばかりです。どこが節目か分からなくなるほどの限界的な技術革新が続くコンテンツ分野では、新たなサービスや機器が、あっと言う間に大きなシェアを獲得することも珍しくありません。

 こうした中、ビジネスのあり方も変わります。コンテンツのビジネスモデルは一般に、DRMによって希少性を持たせてコンテンツを販売するモデル(疑似物財化型)、コンテンツの提供でモノの販売を促進しその収益からコストを回収するモデル(物財帰着型)、コンテンツによってサービスの販売を促進しその収入からコストを回収するモデル(サービス帰着型)の三つに類型化されますが、これらはこの10年の間でどのような栄枯盛衰を繰り広げてきたのでしょうか。いわゆるフリー(無料経済)とは、どのモデルに属するものでしょうか、そしてフリーの世界はコンテンツ産業にどのような影響を及ぼすでしょうか。

 ビジネスの変化とともに、その法的環境も発展を求められます。疑似物財化型を指向するにあたっては、DRMの迂回解除を法で禁止する必要が生じました。iTSに代表される物財帰着型、SNSやオンラインゲームなどのサービス帰着型では、こうしたサービスを運営するプラットフォーム事業者の法的責任の在り方や、情報独占の問題、他方でプラットフォーム事業が成立しやすい法環境の必要性も議論の対象となりました。ユーザ視点では、プライバシー問題も重要な課題となっています。今後、どのような法整備が必要でしょうか。

 今回のセミナーは、第1部でコンテンツビジネスの10年を、第2部でコンテンツの法的環境の10年を論じます。第3部で、ビジネスと法の学際領域に係る今日的課題を列挙するとともに、解決の方向性を論じます。コンテンツビジネス関係者、政策担当、研究者をはじめとする皆様の、奮ってのご参加をお待ちしております。
 
□日時: 平成22年9月16日(木)15:00−18:00(14:30受付開始)
 
□場所: デジタルハリウッド大学 秋葉原メインキャンパス
[住所 東京都千代田区外神田1-18-13 秋葉原ダイビル7階]
[地図 http://www.dhw.ac.jp/access/]
 
□主催: 財団法人デジタルコンテンツ協会
 
□協力: デジタルハリウッド大学
 
□プログラム:
14:30 受付開始
15:00 第1部「コンテンツビジネスの10年」
       講師: 福冨 忠和 専修大学ネットワーク情報学部 教授
16:00 第2部「コンテンツビジネスをめぐる法的環境の10年」
       講師: 増田 雅史 森・濱田松本法律事務所 弁護士
17:00 第3部「今日的課題と課題解決の方向性」
       講師: 生貝 直人 東京大学大学院 学際情報学府
18:00 まとめ、閉会
 
□受講料:
 ・DCAJ会員(正会員・情報会員) 無料
 ・一般(非会員) 3,000円
 
□定員: 100名 (定員に達した段階で受付を終了します。)
 
□申込要領:
・以下のページから申込みフォームに必要事項をご記入の上、ご送信ください。
http://www.dcaj.org/contents/frame04.html
・DCAJより受付完了のメールを返信します。当日はこのメールが受講票となります。
・代理出席可能です。申し込まれた方のご都合が悪くなられた場合、代理の方に「受
講票となるメール」をお預けください。
・受講料は、当日の受付にて申し受けます。
 
□お問合せ: 財団法人デジタルコンテンツ協会 9/16セミナー事務局
E-mail: semi916@dcaj.or.jp   TEL: 03-3512-3901

日本文化政策学会「コンテンツ政策からみた文化政策」

 
 もう本日のご案内になりますが、東京芸術大学千住キャンパスで開催される日本文化政策学会の下記のパネルに登壇します。
 私からは昨年10月に文化政策学会とコンテンツ学会が共同開催した「国立メディア芸術総合センターを考える」の議論を参照しつつ、メディア芸術総合センター問題(あるいはポップカルチャーメディアアートの合成語としてのメディア芸術という概念そのもののはらむ問題)を軸に文化政策コンテンツ政策の協業可能性について問題提起する予定です。
 
===
 
■「コンテンツ政策からみた文化政策」日本文化政策学会若手フォーラム
 
クリエイティブ振興政策に世界のトレンドが向かう中、まるでガラパゴスのように文化政策コンテンツ政策が分かれている日本。
 
どちらも新しい領域として文化政策研究とコンテンツ政策研究が生まれ、同じく社会や政策に活かされる実学としての取り組みが行われる中、相互の交流がまだ少ない状況にあります。
 
文化政策学会が今回、東京で開催されるのを機に、東京でしかできないプログラムとして、クリエイティブクラスター理事長の岡田智博が座長となり、コンテンツ政策研究および政策実践における若手第一線を討論者に迎え、相互の交流となるプログラムを1月9日の午後8時より「政策夜塾」として開催します。
 
学会プログラムでありますが、学会外の方も無料で参加できるオープンなプログラムです。
 
日本のソフトパワーそして文化による社会再生に注目が集まる今とこれからをそれぞれのみなさまと共有できればと思い、おいでをお待ちしております。
 
開催情報
 
■ 開催日時 2010年1月9日(土曜日) 20:00-22:00
■ 会場 東京藝術大学 千住キャンパス
JR常磐線東京メトロ千代田線・日比谷線東武伊勢崎線つくばエクスプレス 北千住駅下車
西口、仲町口 徒歩約10分
東京メトロ 1番出口 徒歩5分
□ 会場案内リンク(東京藝術大学千住キャンパス) http://www.geidai.ac.jp/access/senju.html
 
■ 討論者
境 真良 経済産業省
津田 大介 インターネットユーザー協会
作田 知樹 東京大学大学院人文社会系研究科(院生)/Arts and Law
生貝 直人 東京大学大学院学際情報学府(院生)/クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
 
□ 座長
岡田 智博 東京藝術大学大学院音楽研究科(院生)/クリエイティブクラスタ
 
■ 会費 = 無料 (当日はそのまま会場においでください)
 
○ 本プログラムも含め、1月9日(土)・10日は、同会場にて日本文化政策学会 第3回年次大会が開催中。あわせて御参加下さい: 大会の内容は公式サイト http://www.jacpr.jp/ を御覧ください

10/31「国立メディア芸術総合センターを考える」@静岡県浜松市

 10/31に文化庁メディア芸術祭in浜松併催イベントとして文化政策学会+コンテンツ学会協力のシンポジウム「国立メディア芸術総合センターを考える」が開催されます。僕も企画のお手伝いなどしている関係から東名飛ばして参加予定。メディア芸術祭自体は10/30から11/3までの5日間やっていますので、よろしければぜひ泊まりがけも視野にご参加ください。
 
文化庁メディア芸術祭 浜松展
http://plaza.bunka.go.jp/hamamatsu/index.html
 
以下、こちらのページの真ん中あたりから詳細情報を転載です。
http://1106.suac.net/MAF2009/
 

[[
MAF2009 シンポジウム
国立メディア芸術総合センターを考える」

日時 2009年10月31日(土)  14:00-17:00
会場 南176大講義室
 入場無料 定員200名
 当日受付も行いますが、開始直前の受付の混雑を避けるために、できるだけ事前申し込みをお願いします
 1. お名前、2. 所属、3. ご連絡先 を記載の上、下記まで、電子メールまたはFAXでお申込みください
   静岡文化芸術大学 文化政策学部 片山泰輔研究室
   E-mail: creative@suac.ac.jp / FAX: 053-457-6132(学部共通)
主催:MAF実行委員会
共催:日本文化政策学会
協力:コンテンツ学会
後援:浜松創造都市協議会
概要
メディア芸術の振興は日本の文化政策、産業政策、外交政策等、様々な面で重要な意味を持つ政策課題であると注目されています。その一方でこれを実現するための施策の一つとして提案された「国立メディア芸術総合センター」については、「国営マンガ喫茶」等とも揶揄され無駄づかいの象徴のように批判され、これらの議論はしばしば政治的あるいはセンセーショナルに語られることが多かったのも事実です。静岡文化芸術大学メディアアートフェスティバル実行委員会では、日本文化政策学会との共催のもと、コンテンツ学会の協力を得て、この問題に関しての学術的かつ政策指向の議論を行う場を持つためにシンポジウムを開催することにいたしました。
1.シンポジウム趣旨説明
 片山泰輔(静岡文化芸術大学准教授、日本文化政策学会理事長)

2.国立メディア芸術総合センターに関する経緯説明
 
3.パネルディスカッション
 コーディネーター
  太下義之(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 芸術・文化政策センター長)
 パネリスト
  小林真理東京大学大学院人文・社会系研究科准教授)
  中村伊知哉(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)
  畠中実(NTTインターコミュニケーション・センター[ICC] 主任学芸員
  吉村和真京都精華大学マンガ学部准教授、京都国際マンガミュージアム研究統括室長)]]