コンサルとガクシャとキャリアとかいうヤツと

 昨日晩に某女史に「最近特に外資系コンサル系の人たちで『そのうち大学に戻って研究者になりたい』っていうのが多いんだけど何でだろうね」というネタを持ちかけられて話してました。それで考えてたことを備忘録ついでにとりとめも何もなくざらざら。

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 そういう「彼ら」の現実的な背景ってのは、S木先輩とも前にお話ししてたように

外資コンサルなんかは内資と違って、現実問題としてあと10年今の仕事続けられると思ってる奴は1人もいない
・だからかなり優秀な人でも常にセカンドキャリアのことが頭にある
・セカンドキャリアっていうとだいたい(1)内資(経営企画とか社長室とか行ければいいね)(2)ITベンチャー(うーん厳しい)(3)独立起業(さらに厳しい)(4)学者ってどうよ?
っていう選択肢くらいで、
・(知識層的に)普通の価値観持ってれば(4)(1)(2)、そいで(3)は例外処理っていう選好順序になるから、そりゃ誰でも第一志望を考えながら今を過ごすことになるよね


 という論理展開で大雑把に片付けちまっていいと思うわけだが。

 それが望ましいかそうでもないかっていえば、確かに「タダでさえアカポス減ってきてるのに外から新規参入増えないでよー」とか「いやいや学問ってそういうもんじゃないよ」という声もどこかから聞こえてきそうではあるけれど笑、基本的にはいんじゃないかと思う。

・そもそも今の大学ってごく一部除いたらロクに学問なんか扱えてないわけだし。バリバリやってくれる社会人教員にミクロにもマクロにも需要はあるでしょう。
・そのごく一部でさえも今じゃ古典的な本読んで論文書いての学問から抜け出さなきゃいけないよね、って話しになってるわけだし(除東大)。
・今の大学っていう制度だって決して褒められたもんじゃないし、きゅーたいいぜんの体制改革してくれるっていう期待も持てる。
・特に日本ではBSがまだまだまだまだ弱いから、そのへん強くしてくれたらいいよね、ってのもある。


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 さらに、某女子によればそういう「彼ら」の主たる欲求って「学者としての立場使っていろいろやりたい」とかいうもので、それってどうなんだろうねって話。

 個人的には業界が競争的な状態になるのは悪いことじゃないし、動機とかが健全かどうかはともあれいやーガンガンやってちょうだいよ、って気がするんだけど。でももうちょっと慎重に考えるとすれば、今のごちゃごちゃした大学がよけいごちゃごちゃしちまわないために、やはり淘汰するメカニズムは必要だろうってことで

(a):市場のルール全般(ハイエクみたいなもの想像して)
(b):(a)の中でも特に「何が(誰が)学問(学者)として価値があるか」の評価指標
(c)ビジネスが学問に進出してくる一方、学問からビジネスに価値や人材が流動する社会的・制度的土壌もほしいね


 という程度のことはちゃんとやっておきたいわけだが。
 やはり(b)が難しい。(x)学問の価値って何だろう。(y)学者の役割ってなんだろう。
 (x)はやっぱり難しいのでここでは置いておいて。(y)について考えるとやっぱいろいろ考える。

 基本的には、大学教授の役割って(y')研究と(y'')教育だというふうに教えられている。

(y')については、研究の資質ってなんだろうってなったとき、やっぱり何かを「知りたい」、「それを知らなきゃ死ねない」ってものがあるかないかだと勝手に思ってる(いや最近、そうじゃない人が多いってことでけっこうショック受けてそれについても再考の余地は非常に大きいわけだけれど)。それがないとやっぱり辛いだろう。で、ちゃんとアウトプット出す程度の勤勉さは持たないと。

(y'')。基本的には若い人教えて、立派な社会人送り出したり、後進研究者育てなきゃ、っていう話は大事で。
 でも最近、それ以上にとみに感じるのは、「研究」にとっても教育って大事だと思うんですよね。それで気に入ってるのが、Comparative Institutional Analysisの青木学派が使ってる「Fellow Traveller※」という言葉。やはり人間て、思考の限界次々と突破していくためにはほどよい議論相手が必要なわけで(非常に面白い研究してた先生が後年知的にうーん、ってなっちまうのも、そういうのちゃんと育てられてないからなんじゃないかなあ。)。特に飛びぬけて頭がいい人って議論相手に苦労したりする。Fellow Travellerをしっかり育てる「教育」ってのは、大事だなと思ってしまうわけです。

※ちょうどこれも某女史に紹介してもらったMcMillan『市場を創る』の訳者後書きでも訳者の瀧澤先生がその言葉使ってたな。これは非常に面白い本なので、こんど紹介します。


 やべーもう7時だ、大宮行ってきます。夜までネットつながらないのであしからず。