林紘一郎先生他『インターネット時代の「通信の秘密」再考』について

 林紘一郎先生他『インターネット時代の「通信の秘密」再考』報告書、先ほど湯淺先生のところで見かけて早速拝読しました。24p以降の「憲法論」「事業法」「非対称」それぞれの視点からの検討、そして27p以降の「改善のための7提案」が特に必読と思われます。7提案の中では、特に「4.2 「他人の秘密」「通信の秘密」「パーソナルデータ」の三層構造」=通信内容と通信履歴+αの区分的規律、そして「4.4 クラウド・ビジネスの規律」「4.5 コミットメント責任」が必読と思われます。
http://lab.iisec.ac.jp/~hayashi/Report.pdf
 31pに「市場で起きる問題は、市場で解決するのが原則であり、約款や業界団体の基準のような自主的規制に任せることを基本とすべきであるが、nudge する(やさしくつつくことで気づかせる)までは許されると思われるので、第三者評価認証制度とコミットメント責任の組み合わせが有効かと思われる。」と書かれている通り、基本的にこの問題も共同規制でしか解決し得ない問題です。共同規制≒nudged-self-regulation。サンスティンの定式化なのです。アメリカはこういうやり方が当たり前すぎるのであえて「共同規制」という言葉をあまり使ってこなかったけど、最近は通信規制でもプライバシーでもかなりこの言葉出てきてますね。
 そのエンフォースメントがFTC法5条方式含めたコミットメント責任によって担保されるべきというのは基本的に僕もそう思うのですが、共同規制の課題は「コミットメントしない人たち」をいかにして切り分けて規律するか。僕はこの点については、(競争法的観点からも)いわゆる「セーフハーバー方式」が最有力の解法の一つだと思っております。この点近々拙稿も出版されるはずですが、また別のネタをいくつか進行中です。
 あとは今回は基本的に対象外の模様ですが、刑事訴訟法との関係も共同規制的にやっていくしかないですね。プリザーベーションやリテンションの方法・対象・期間、そして開示は「どこまで」「どう」やるか含めて、やっぱり民間でマルチステイクホルダーに自主規制ルール作って政府が承認するという「プロセス」と「権力分立」を、しっかり法律の中に書いて行く必要があるのだと考えています。

実践 行動経済学

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