二度目の札幌滞在記(北海道大学GCOE)

 帰ってきました東京。滞在中は消耗しきってて日記かけませんでしたが、簡単に記録を残しておこうと思います。あまりテキストの記録がないので各日の講義内容はちょっと前後あるかも+かなりの程度俺の講義中の妄想です。


背景:ひと月前のアイサミットにて大変お世話になりました北大T村教授のお招きにより、N原くんS井さんと3人で8月24日〜29日の間、北大の集中講義/研究会に参加してきたのでありました。非常に濃ゆい知的経験に心より満足です本当にありがとうございました。T村教授は「多元分散型統御を目指す新世代法政策学」という名のGCOEのリーダーをされており、今回の集中講義はその一環です。ちなみに講師のナリ先生は全部英語で喋って、それをものすごい勢いでT村先生が抄訳していらっしゃいました。
http://www.juris.hokudai.ac.jp/


24日(日):朝一番の飛行機で羽田を発ち、午前中に新千歳空港着。まだホテルにチェックインもできないので荷物だけホテルに送ってもらい新千歳のアウトレットへ。小雨が降っていたこともありとんでもなく寒いのでBEAMSでジャケット購入。会員証がホログラムでカッコイイのでBEAMSの会員に。飯食った後はひとまず札幌へ。夕方N原くんと合流、ラーメン食べに。ホテルで仕事しつつ明日が早いので早めに就寝。
昼:ビビンバ 夜:炙りチャーシュー味噌ラーメン
買:BEAMSのジャケット


25日(月):朝10時半から集中講義スタート。講師のナリ先生がすげいカッコイイ。前半は知的財産の基礎理論。権利か特権か、独占/死加重、公共財の理論など。後半から特許の基礎理論。ロックの労働所有理論(労働価値説との関係もちょこっとだけ解明)、Demsetzの所有権理論、UKとUS、Jeffersonは大したことなかったのかも、ケイパビリティの祖のPenroseは実は特許もやっていた、LKNW[1987]は法と経営学的で面白いねなど。終了後はT村先生らとタクシーでスープカレー屋へ。東大ロー→法研助手の方らと歓談しつつ。なぜか夜中にN原くんとtwitterで論戦。社会科学のメインは規範的主張をせずその実証とアルゴリズムの解明までをすることで経営学者だけは「それ(居酒屋のポリティクス)をどうやってもっとうまくやって利益につなげるか」までを対象にする、今は実践という行為/現象が理論的に面白い、というメタな関心/主張まっしぐらねこまっしぐら、知行合一は難しいなど。
昼:生協で弁当 夜:スープカレー


26日(火):朝から特許の続き。パテンタビリティとパテンタエリジビリティ、アルゴリズムの特許、論理的整合性に重点置きすぎるとどうしても波及効果のほうに目が行かないね、対象要件と内容要件の分別が大きな進歩、State Streetの判決は判事が94歳のときに書かれたびっくり、TSMテストとflexible & common senseアプローチ、審査に於けるテキスト重視主義とプラグマティズム、Scotchmerはやっぱりイイ、パテントトロールムーミントロールの違いで盛り上がる、Anticommons、特許と独禁法など。 JASRACの「権利者からの独立性の確保」の是非問題、30分の間に文章仕事2つ+文書仕事1つきてびびる、フェアユース波動関数論、多面市場=パトロン論、ScotchmerのSpillover論は乗数効果みたいなもんなど。終了後はT村先生たちと駅ビルの四川飯店(本店は赤坂)で夕飯。ドイツ語の勉強法など。
昼:おにぎり 夜:中華たらふく


27日(水):最初にちょこっと特許をやり、著作権に突入。特許よりは(特に人格権で)ロックが適用しやすい、Ginsburgの「人格的な利益」論とは別物、Goldsteinとんでもねえ、Victor-Marie HugoのALAI、フランスでは伝統的にPDの確保が重要、Ginsburgの"A Tale of Two Copyrights"にすげーインテリ感、USのMillar v. Taylor(土地のアナロジー)でピンチったけどDonaldson v. Becketで助かった、Goldstein的にはAuthorshipは著者と利用者のコミュニケーションまでを指す、フーコー的にも"Author"は社会的構成概念、Brownによれば著作権には「1、人格権」「2、政策的権利」「3、経済学」の3つの基礎、Peterson的にはPromotion of Learningを重視、Macaulayの1841年スピーチかっけえ、Landes & Posnerの事前/事後で混乱、生産ー利用の間で自然状態では(ある種の限定合理によって)サブオプティマルな均衡になってしまうであろうところ著作権オプティマルに誘導するっていう考え方をするのかナルホド、権利があって初めて無償利用が問題になるのであって無償利用があるから権利を創設せよという議論はそもそも成り立たないなど。Saxenian[1994]『現代の二都物語』の原題はディケンズと関係ないけど『現代の二著作権物語』は比較制度分析的には一般的な自然/インセンティブでなくC/CCでやってみたい、A "Long" Tale of Two Copyrights、Benkler先生いつBerkmanに!!、Wealth of Networkの翻訳が社会思想系の雑誌に載るかも、Demsetz[1967]の邦訳がなぜか「神戸市外国語大学」にある、Frischmannかっけえ、DemsetzをFrischmannが批判して更にDemsetzが反論してるハァハァなど。終了後は古本屋に寄りつつホテルへ。S田さんご推薦のスープカレー屋を求めて彷徨う、スイーツ(笑)、道産ワインとチーズ買ってホテルでYouTubeつまみにプチ宴会など。ついにメガネ死亡、10年ぶりに真面目に何日もイスに座っていて腰を痛めるなど。
昼:おにぎり 夜:スープカレー
買:実践理性批判女工哀史


28日(木):講義は最終日。著作権の続きから。Samuelsonらによるプログラム著作権マニフェスト、Behaviorがより重要、Goldstein的には派生作品の要件は原作品に創作性を加えて別のマーケットを作ること、TRIPsはBerneよりも怖いから人格権はそもそも入っていない、フランスの人格権は永遠、フェアユースにGood faithとEquityが入っていると考えるのは間違い、Fisher評判わりー、でもFisherのフェアユース理論はCreative processの保護とか入ってて好きだな、しかし後半ではTo provide minimal compensaton to the artistsとかかなり無茶いことも言っている、Bell[1998]/Fisherの完全価格差別/ペイパービュー理論は面白い、BellはDystopian、著作権と修正第一条問題など。最後に一時間だけ商標やって集中講義は終了。終了後は大丸でアイスを食べてN原君空港へ、ラーメン食ってお腹痛くなりつつホテルへ、ホテルがスイートにアップグレードされててすげー、腰痛本格化など。夜はイタリアン食べに出て帰ってからワインの残り飲んだりする。
昼:おにぎり 夜:ラーメン/イタリアン


29日(金):朝十時にアポお願いしてM浦さまご挨拶@北海道新聞。T村先生遠隔講義等を担当してる方をご紹介頂く、Magnatune、荷物が大きくてケーキは食べられずなど。近くのカフェでハンバーガー食べつつ時間つぶし。腰が痛くて移動に苦戦。S井さんがiPhoneのゲームに熱中してるのを傍目にN口先生をお待ちして合流し札幌市役所にご挨拶。アイサミットは洞爺湖サミットと同じ「サミット支援室」で運営されてたと初めて知る。再度カフェで3人で仲良くアイスなど。午後は北大に移動して研究会2件。「よくわかる音楽著作権ビジネス」のA藤さまによる米国サンプリング訴訟の検討、ナリ先生によるセミコモンズ(コモンズのガバナンス)の報告/議論。解釈論の重要性をある程度納得すると同時にゲームのルールをけっこう理解。コメント等は真面目に書くととんでもない量になりそうなのでまた次の機会に。終了後懇親会、すげー食べ物豊富、みなさまにご挨拶回り。中座して空港へ、手荷物検査でカバンにライターが4つ(結局5つ)入ってる問題ですげー手間取り反省。乱気流ですごい揺れながらも11時半頃には羽田着、京急車内にジャケットとお土産置いてきて焦る、電車は赤羽までしか動かず親に車で来てもらってなんとかかんとか川口まで帰着しましたとさ。
昼:トンカツハンバーガー 夜:パーティー料理、ビールなど


以上簡単ですがご報告でした。滞在中にも仕事がガンガン増えていたこともあり、腰が痛いけどちょっと休んで週明けからは平常業務に戻ります。