学際学徒の心得

 学部時代も含めて学際学徒10年近くもやってると色々心得みたいなものも見えてくるな、ということで私家版「学際学徒の心得」をtwitterhttp://twitter.com/ikegai)でつぶやいていたのをちょっと転載します。まだまだ勉強していく中で間違いも分かってくると思いますので、たまにアップデートしていけましたら。
 
●学際学徒の心得その1、とにかく数を書くべし。学際分野では「彼は論文少ないけれど実力あるよね」とは誰も認めてくれない。一見関係なさそうな色々な物を結び付けたり新しい現象を論じるためには研ぎ澄まされた分析力と文章力が命。そしてその能力はとにかく数を書く中でしか身に付かない。
 
●学際学徒の心得その2、とにかく色々な人に読んでもらうべし。既存のディシプリンと違ってどんな論文が素晴らしいかの尺度は一義的には存在しない。書きたいこと・書くべきことは片端から書いてできるだけ多くの人に読んでもらう中で初めて価値は見出される。当然文章は極力ネットに載せる必要がある。
 
●学際学徒の心得その3、実践は何だかんだ業績にはならないと心得るべし。認めてくれるところもあるけれど少数派、学界で認められて学者になる以上やはり文章が命。実践で手足口を動かしてる間でも、「この実践をやった人間にしか書けない文章は何か」を見出すことに常に頭を回し続けているべき。
 
●学際学徒の心得その4、殊更博士課程以上になったら日本語の文章は読んでる時間は無いと心得るべし。英語圏ではとんでもない量と質の人たちが本気で学際を学問として何十年もやっている。あらゆる言語・分野から自分の研究に関係する最も優れた文章を探してきて、徹底的にその内容を盗み取るべき。
 
●学際学徒の心得その5、査読に出すべし。学際の場合特に既存分野の先生方に査読で認めてもらうのは難しいけれど、一流の研究者から指導を頂くまたとない機会になる。関係学会が無数ある中でどの雑誌にどんな書き方で出すとどの位の確率で通るかの方法論を体得する必要がある。
 
●学際学徒の心得その6、実業と学問の境目を体得するべし。学際の世界では両者は常にある程度曖昧、その境目は誰にも説明できない。とにかく経験する中でその境界を体得して初めて学問ができるようになるし、それがわからなきゃ「実業と学問の架け橋」だってできるはずがない。
 
●学際学徒の心得その7、競争するべし。学際は常にイノベーション、それは競争の中からしか生まれてこない。学際分野はともすれば「この分野は自分だけ」という場合もあるけれど、そこには競争圧力がない。擬似的にでも競争集団を作り出してその中に身を置く必要がある。
 
●学際学徒の心得その8、研究者にこだわるべし。学際には多才な人たちが多いから他業種に移ることが比較的容易だしそれは望ましいんだけれど、その退出可能性が研究者としての甘えになっていないか。自分が考える研究者像とは一体何で、それにこだわる理由とは一体何なのかを殊更明確に持つ必要がある。